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栽培こよみ 第67回

 
 松の実生
 
 松は庭園樹としてよく庭に植えられているし、盆栽の材料にも使われる。三
保の松原、松島のような景勝地では、景観の主要な構成要素にもなっている。
また、お正月には門松のような飾りに使われる習慣が残っていることから見て
も、身近な植物なのである。
 
 昔読んだ吉村巌氏の本に、松毬の実生のはなしが書いてあった。松毬を小鉢に
植えて、芽が出てきた姿を楽しむというのである。当時は、そんなものが夜店
松毬
 などで売られていたらしい。
 
 松の種は松毬の鱗片の間に入ってい
るので、松毬がちょうど熟したころを見
計らって植えるのがコツなのだそうだ。
これより時期が遅れると種が飛び出し
てしまって、苗を作るだけならよいのだ
が、松毬から芽の出る姿を楽しむには上
手くない。
 
 作り方は小さな鉢へ培養土を入れて、そこへ拾ってきた松毬の半分ほどを砂
の中に入れておく。時々水を与えていると、やがて芽が出てくるから実に簡単
である。
 
力強く土を割って出てきた新葉。丸い型を作って、その上に種の殻を持ち上げている

 松毬の採取は9月末から10月頃が
良い。若い松毬は緑色であるが、そ
れが褐色に変わってきたころが良い
だろう。種を取るのであれば、それ
を乾燥させておくとり鱗片が開いて
きて、そこから種がこぼれ出るよう
になる。
 もしこぼれ出た種があれば鉢に播
いておくとよい。
 1昼夜、冷水に浸けるなどの処理をして、播く時期が良ければ2週間ほどで発
芽するが、乾燥した種や、播種が遅れて寒い冬にかかると2か月以上にも及ぶ
ことがある。
 力強く土を割って出てきた新葉は丸い型を作って、その上に種の殻を持ち上
げている姿は滑稽にも思える。
 
 松は葉や種が食べられる。アカマツやクロマツの種は小さいが、ハイマツの
種はそれよりも大きい。しかし高山に生えているからライチョウが好んで食べ
ているらしい。
 松の中でもチョウセンゴヨウは種が大きくて、長さが10ミリ以上もあり、ク
ルミのような味がするという。韓国では市場で食材としてよく売られている。
松の種にはタンパク質や脂質、カリウム、ビタミンなどが豊富に含まれている。
 葉も食べられるようで、青木昆陽が「昆陽漫録」の中で松葉の食べ方を詳し
く紹介していると聞いた。樹幹から出る松ヤニは石鹸やニスの原料などに利用
される。
 
発芽
新芽
 
 
新芽
  去年拾ってきた松毬の採集時期が少
し遅れたようで、松毬から新芽を出す
ことに失敗した。
 それでもついて来た種を蒔いたら
発芽して、かわいい苗に育った。
 きれいな化粧鉢で育てると面白い
飾りになると思う。
 
 

(2013年7月1日)