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栽培こよみ 第50回

 
 ユリ(食用ユリ) ユリ科
 
 今年は例年になく寒い冬のようですが、早くも園芸店には春植えの草花や球
根がたくさん並んでいました。
 今月は、そんな中から花を観賞した後に、ユリ根も食べられます、とラベル
に書いてあった食用ユリを植えてみることにしましょう。
 
食用百合園芸店で買った種球のユリ根園芸店で買った種球のユリ根 食用になるユリ根は
コオニユリ、オニユリ、
ヤマユリなどの鱗茎で
す。他のユリ根も食べ
られますが、数が少な
くて高価であったり、
苦みがあっておいしく
ありません。食用とし
て栽培されて、市場に流通しているユリはコオニユリが
ほとんどです。
 
 コオニユリはオニユリと花がよく似ていますが、全体に形が小型で、葉の付
け根にムカゴという珠芽を付けないことで区別ができます。
 もちろん八百屋で売られているユリ根を植えても花が咲きます。しかし、園
芸店で種球として売られているものは、傷や病気などに侵されていない健全な
球根を選別したものですから、食用球根よりも少し割高になっています。
 
八百屋で買った食用のユリ根八百屋で買った食用のユリ根
 ユリの栽培は鉢へ植えても庭植えのどちら
でもできます。
鉢植えの場合は7〜8号の少し大きな鉢に植
えます。培養土は市販の園芸培養土か、ある
いは赤玉土と日向土の混合したものに腐葉土
や堆肥を2割ほど加えて用います。
まず、鉢底ネットを敷き、鉢底用の大粒の培
養土を少量入れてから鉢の半分程度まで培養
土を入れて球根を鉢の中央に配置します。そして鉢の縁まで残りの培養土を加
えます。球根の位置が土の表面から球径の3倍ほど下になるようにします。こ
ように深く植えるのはユリが土中にある茎からも根を出すからです。
 寒い冬の間は凍らないところへ置いて管理します。暖かくなればよく日の当
たるところに置きますが、真夏の暑いときは日陰に取り込むようにします。
 
 庭植えにするには水はけよく、日当たりのよいところを選んで植えます。しか
し、球根が乾燥しないようにする必要がありますから、他の草花などと混植し
ます。それでもユリは草花よりも上に茎を伸ばして
ユリの花も楽しめます
ユリの花も楽しめます
花を咲かせますから心配ありません。
 植える位置が決まれば30センチほどの穴を掘り、
堆肥と少量の肥料を入れてよく混ぜておきます。球
根は球径の3倍ほど土の下に来る位置に置き、上か
ら土をかけます。
 
 管理は、鉢植えも庭植えも春になって茎を伸ばし
始めてから花が咲くまでは、油粕と骨粉の固形肥料
や液肥などをときどき与えます。
 球根を大きくするために、花が咲き終われば取り
除いて種を付けないようにします。そして、地上部
が枯れて球根が充実したころに掘り上げます。
 
 ユリ根は古くから食用に利用されてきました。花を観賞した後はユリ根を食
べて見ましょう。
 昔はユリも日本各地であちこちの山に見られたのでしょうか、戦前の本には
ユリ根のいろいろな食べ方が見られます。収穫した球根の鱗片を外して1,2
片を茶碗蒸しに入れて食べるのはよく知られています。
 鱗片を茹でて塩と砂糖で味付けをしただけでも、ユリの滋味があってとても
味わい深いものです。大きな鱗茎を丸ごと煮て味付けしてもおいしいでしょう。
その他にも、てんぷら、和え物、炊き込みご飯などに幅広く利用されます。
 ある地方ではユリもちをつくるようです。鱗片を蒸したものを、もちをつく
時に一緒につき混ぜます。このもちには甘味があり、ユリのほのかな香りがし
て至って品のあるもちができるとあります。
 この他にもユリ根を使ったいろいろな調理方法が紹介されていますが、ユリ
根の持つ品のよい甘さや香りを味わうには、できるだけ簡単な調理の方が味わ
い深いものです。
 植えたユリが収穫できれば、ぜひユリもちをつくって食べるのを楽しみにし
ています。
 

(2012年2月1日)