「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」とは美人をたとえた言葉です。「歩く姿は百合の花」とは、ユリの花は、花が大きく、左右に揺れることから、人間の歩く姿は左右に揺れるほど、頭が重いということがわかります。
ユリはユリ科ユリ属植物の総称で、花が大きいため目立つものが多いです。近年、7~9月頃に高速道路の法面や、街中では人家の庭先、空き地などで、白い花のユリが雑草のように生えているのを見かけます。タカサゴユリあるいはシンテッポウユリ(タカサゴユリとテッポウユリの雑種)と呼ばれ、種子から一年で花を咲かせるため繁殖力が強いです。また、身近なユリとして、カサブランカは切り花でよく使われます。花が大きく目立ち、花粉が衣服につくと取りにくいことから、最近では、花粉部分を切り落として、販売されることが多いです。
生薬としては、オニユリ、ハカタユリなどの鱗片葉を「百合(ビャクゴウ)」として用います。張仲景の書いた『金匱要略』に百合病があり、百合には精神安定の効があり、百合知母湯、百合地黄湯などに配合されることが記されています。また、一般用漢方処方では、辛夷清肺湯に配合されています。
食用の「ゆり根」は、主に北海道で栽培されています。毎年9月下旬ごろから収穫が始まり、11~2月頃が旬です。加熱すると、ほくほくとした食感があり、茶碗蒸し、かき揚げなどで食べます。食用としては、野山に生えているユリをそのまま使用するのは毒性がある可能性があるため、一般にスーパーで販売されているおがくずに包まれている「ゆり根」を使用したほうがよいでしょう。