季節は夏から秋へと移りつつあります。にぎやかだった早朝の蝉の声に代わって、秋の虫達の鳴き声が、耳に心地よく響くようになりました。中国医学の古典である『黄帝内経素問』には、人々が健やかに暮らすために、四季それぞれにおける養生法が説かれています。秋の過ごし方について、『柴崎保三著、鍼灸医学大系①「黄帝内経素問 序説・本編一~第四」』より抜粋して紹介いたします。

『黄帝内経素問』の「四氣調神大論篇第二」には、秋の養生法について以下のように記されています。「秋の三カ月を容平という。天の気は急であり、地の気は明である。早に臥し、早に起き、鶏と倶に興る。志を安寧にし、秋刑を緩める。神気を収斂させ、秋の気を平にする。志を外に向けるようなことなく、肺気を清にする。これが秋気に応じ、収を養う道である。之に逆らえば、肺を傷つけ、冬に消化不良になる。蔵を奉じる者は少ない。」と説かれています。

この部分の解説は次のようです。「春は生じ、夏は長じ、秋は収するという万物の規律に従って、秋になると凡てのものが平らかに容(かたち)づくられる。そこで秋の三ヶ月を容平という。天の気は、せまり来るようであり、地の気は、はっきりとして爽やかである。日没後に暗くなってから臥し、朝は暗いうちに起き、鶏が時をつくと同時に活動状態に転換する。志を安寧にし、万物を収縮させ枯死させるように働く刑罰的な秋の自然の力を、緩和して受容するようにする。精神を引きしめ、秋気の影響を過度に受けないようにする。志を外方に向けることなく、肺気を清浄に保たなければならない。これが秋気を受容する生体のあり方であり、また秋気本来の性格である収の力を助成する道である。この法に逆らえば、肺を傷つけることになり、冬になってから消化不良を起こすようになる。」という内容です。

この秋の養生法を参考にして、やがて来る冬に向けて体力を養うようにしたいものです。秋は暑くも寒くもなく気持ちがよい季節です。空気のきれいな場所で、ゆっくりと散歩を楽しむのも良いように思います。