晩秋の頃、サフラン Crocus sativus L. の花が開きます。薄紫色の大きな花弁と、中心から伸びる濃赤褐色の雌しべは、色合いが鮮やかで、私たちの目を楽しませてくれます。

サフランはアヤメ科の多年草で、雌しべの柱頭および花柱上部を乾燥したものが生薬「サフラン」として利用されます。中国では「番紅花」として知られており、主に月経困難や更年期障害などに用いられます。また、料理では香辛料としてパエリヤやブイヤベースなどに用いられます。

サフランの栽培は、スペイン、ギリシャ、フランスなどのヨーロッパ中南部やイランで盛んに行われており、日本では佐賀県の竹田市での栽培が有名です。花が咲いた直後に採取したものが最良品質の「サフラン」になります。花ごと摘み取ってから、濃赤色の雌しべを収穫し、低温度で乾燥させて仕上げます。100個のサフランの花から、わずか1~2グラムの生薬「サフラン」が収穫されるにすぎず、「サフラン」は高価な生薬となります。

そのため生薬「サフラン」には、しばしば偽品が流通します。「サフラン」をプラスチックのケースに入れた商品では、流通時に偽品と入れ換えることを防止するために、特別なシールで封印されているものを見かけます。また、インドでは玉ねぎを薄くスライスしたものを赤く着色し、指先で細く整形した偽品が流通しています。

本物の「サフラン」には黄色色素カロチノイド配糖体のクロシンが含有されていることから、コップなどの容器に入れた水の上に「サフラン」を置くと、クロシンが筋状に沈んでいくのが観察されます。偽品の場合、赤い着色料が水面付近から四方に拡散し、筋状にならないことで見分けることができます。