染料になる植物として有名なアイは、夏から秋にかけて花を咲かせます。植物園などに出かけると、この時期でも、穂状に密生するピンク色の小さな花を観察することができると思います。アイは、5世紀頃に中国から渡来したとされており、かつては染料植物として広く栽培され、身近な植物であったようです。

アイの葉を用いる藍染めには、生葉染めと、葉を乾燥あるいはスクモ(藍玉)に加工して行う発酵建てがあります。藍染めの染料になる色素はインディゴです。生葉染めは、葉の汁に布を浸し、その布を空気に晒すことによって、手軽に染めることができます。発酵建ては、還元・酸化という化学反応を利用して、乾燥葉やスクモに含まれるインディゴを抽出し、染色する方法です。

薬用としては、アイは、日本では民間薬として用いられ、やけど、痔、毒虫刺されに、生葉の汁や葉の煎じ液を外用する、魚やキノコの中毒に、葉の煎じ液、生葉の汁、藍染めの染液を内服するなどの方法がみられます。また、アイは、生薬「青黛」の原料となります。「青黛」はインディゴを含む粉末で、『開宝本草』には、「諸薬の毒を解す。小児の諸熱、驚癇発熱、天行の頭痛寒熱に服する。熱瘡、悪腫、金瘡、下血、蛇、犬などの毒につける」と記されています。

アイはタデ科の一年草で、タデアイとも呼ばれます。タデ科の植物は、アイと同じように、夏から秋にかけて開花するものが多くあり、この時期には、食用となるソバが花盛りです。また野山や道端では、比較的アイに似ているイヌタデをはじめ、ミズヒキ、イタドリ、ミゾソバなどの花を観察することができます。