2月から3月にかけて、雪が周囲に残るような寒い中で、オウレンはひっそりと花を咲かせます。オウレンの根茎は、黄連の名でよく知られる生薬です。

黄連は、一昔前には高値で取引されていたことから、日本においても、スギ林などの山間の湿り気のある場所を利用して、種を蒔いて栽培が行われていました。播種後、12〜15年間くらい育成したのち、地下部を掘り起こし、ひげ根を除去し、根茎を乾燥したのが黄連となります。現在では栽培は盛んではありませんが、かつて蒔かれたであろう種子から半野生化した株がしばしば見られます。

オウレンの仲間にはいろいろあり、セリバオウレンやキクバオウレンなど根茎の発達するものを生薬として用います。一方、ミツバオウレンなどは、根茎が細いため、日本では薬には用いません。しかし、セリバオウレンなどと同じように苦味があり、北アメリカでは全草を民間的に苦味健胃薬としています。

黄連の含有成分としては、アルカロイドの一つであるベルベリンが知られています。ベルベリンは、最初にメギ科のメギ属(Berberis 属)植物から抽出されたため、その名前がつけられました。ベルベリンは、ミカン科のキハダの樹皮に由来する黄柏にも含有されています。黄柏と黄連は粉末にするとよく似ていますが、黄柏には粘液細胞が大量に含まれていることから、粉末に水を加えて練ると粘液状になり、この点で、黄連と区別することができます。

また、オウレンの仲間は、山野草としても人気があり、しばしば鉢植えで売られています。栽培には、腐植質に富んだ培養土を用いて、適度の湿気を与えて半日陰で育てると良いとされています。原植物を育てて観察することも、生薬に対する理解を深める上で、大切なことかもしれません。