日本で食用にするイモには、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマノイモなど、いろいろなものがあります。現代では店頭に並ぶ野菜は四季を通じて変化が少なく、ジャガイモなどはいつでも手に入れることができます。その中でもサトイモは出回る期間が比較的限られており、晩秋から冬にかけての味覚という印象があります。

サトイモの食用部分はデンプンが貯えられた地下茎です。中央部の大きな芋が「親芋」とよばれ、親芋の節に子芋、その節に孫芋がついています。サトイモの栽培品種は、子芋や孫芋がたくさんできる「子芋型」と、親芋が大きくなる「親芋型」に分けられます。日本を含む東アジアの温帯では主として「子芋型」が、東南アジアから太平洋諸島の熱帯圏では「親芋型」が食用にされています。

サトイモの原産地は、インド東部周辺と推定されています。日本へは古くに伝わり、縄文時代に稲作が始まる以前から食用にされていたとも考えられています。またサトイモは稲と同様に、日本人の生活に深く関わりのある重要な作物として扱われてきました。江戸時代の『本朝食鑑』に「八月十五夜の月見には子芋と豆を煮て食べ、九月十三夜の月見には薄皮をつけた子芋と栗をゆでて食べ、正月の雑煮には親芋を入れて食べる。これらは昔からの習慣である」と記されています。このことからも、サトイモが特別な作物とされてきたことがわかります。

日本の民間療法では、サトイモを使ったイモ薬が知られています。イモ薬は、生のサトイモの皮をむき、ショウガとともにすりおろし、小麦粉を練り合わせて、紙や布にのばして患部に貼って外用とします。消炎作用があり、肩こり、咽の痛み、歯痛などによく効くといわれています。