暑かった夏も一息ついて、秋めいて涼しくなったころ、キンモクセイの花がいっせいに咲き出します。

キンモクセイ Osmanthus fragrans Lour. var. aurantiacus Makino は、中国原産のモクセイ科モクセイ属の常緑小高木です。モクセイ属のラテン名 Osmanthus に「匂う花」という意味があるように、キンモクセイは強い芳香のある赤黄色の小花をたくさんつけます。この香りは、比較的遠くまで運ばれるため、散歩をしているときに、目の前に植物がなくても、どこかでキンモクセイが咲いていることがわかります。またこの香りは、トイレの芳香剤にも用いられており、キンモクセイは身近な香りを持つ植物として知られています。

キンモクセイやギンモクセイなどのモクセイの仲間は、世界各地で古くから庭木として用いられています。日本では、雄株が植栽されているため果実はできず、繁殖には挿木や接木(つぎき)、取木などの方法が用いられます。

中国ではモクセイの仲間を「桂花」といい、一般にはキンモクセイがこの名で呼ばれます。桂花は、中国では伝説や詩歌、絵画などに登場し、古くから人々に親しまれています。花を白ワインに漬けた「桂花陳酒」は、日本においても中国製の食品を扱う店で時折みかけることがあります。この他に、花を集めて密閉容器に入れ、残り香を楽しんだりもします。

モクセイ科の植物は他にも有用なものが多く、漢方医学で用いられる「連翹」や「秦皮」などは、この科の植物に由来します。また、ジャスミンやオリーブなど、私たちの生活とつながりが深い植物もこの科に含まれます。