いつしか猛暑は過ぎ去り、風が涼しく感じられるようになりました。季節は秋へと移り変わり、多くの植物はこの時期に実りを迎えます。街の中を散歩しながら、公園や道路脇に植栽されている樹木を観察すると、イチョウ、トチノキ、アオギリなどの果実を見つけることができます。

アオギリの果実は独特な形をしています。成熟するにつれて5片に裂開し、各片は長さ8センチほどの舟のような形になり、その縁に直径6ミリほどの丸い種子を数個ずつ付けています。この各片は、果実に由来する「心皮」というもので、一見すると葉の様な形をしています。しかし、本当の葉は掌状で、20センチ以上の大きさになります。

アオギリ
(写真:アオギリ)
アオギリの果実
(写真:アオギリの果実)

ところで、『傷寒論』や『金匱要略』などの医方書には、それぞれの処方について、用いる薬材とともに製剤方法が記されています。丸薬では大きさが指示されており、八味丸や麻子仁丸などでは、「梧桐子大」の丸にすることと書かれています。中国ではアオギリのことを「梧桐」といい、「梧桐子大」とはアオギリの種子の大きさの丸にすることを示しています。

日本では、アオギリの種子や葉を用いた民間療法が知られています。種子は煎じたり、炒って粉末にして咳こむときに飲んだり、葉の粉末を切傷や打撲に外用したり、生の葉の汁をいぼに塗ったりします。また、種子は脂肪やたんぱく質を多く含んでおり、かつては炒って食用とされたこともあったようです。