「秋の野に咲きたる花を指折りて かき数ふれば七種(ななくさ)の花」

「萩の花 尾花 葛花 なでしこの花 女郎花 また藤袴 朝がほの花」

これらの二首は、山上憶良が秋の野の花を詠んだ歌で、『万葉集』に収められています。ここに詠まれた7種の植物が、「秋の七草」です。「尾花」とはススキの花のことで、ススキの穂の形が動物の尾のようであることからこの名がついたとされています。

ススキは中秋の月見のお供えには欠かせないものです。ススキを月見に飾るのは、収穫物を病虫害や災害から守るとともに、来年の豊作を祈るという、厄除けの意味があるとも言われます。また、本来は、サトイモとイネを供えていたのですが、イネの代わりにススキを飾るようになったという説もあります。

ススキは、『本草綱目』には、「芒」という名で、「茎の煮汁を服用すれば血を散じる」と記されていますが、現在ではほとんど薬用にされません。また、日本での利用は、『民間薬用植物誌』に、「根を乾し貯えておいて瘡毒を去るために煎服する」、「根を風邪に煎服する」、また、『実用の薬草』に、「秋に根を掘り乾かす。解熱、感冒の薬、煎じてのむ」など少数の記載が見られるにとどまります。

ススキは、茅葺屋根を葺くのに用いられることから、かつては、集落の近くに「茅場」と呼ばれるススキの草原があり、人々が手入れをして大切に守られていました。しかし、近年では、かつての茅場は雑木林や宅地へと変化し、広大なススキの草原は少なくなってしまったようです。