「夏も近づく八十八夜…」と歌われるように、立春から数えて八十八日目にあたる5月2日前後には、日本各地で茶摘みが始まります。この頃に摘み採った新芽で作った茶葉を、新茶または一番茶といい、品質がよいものとして好んで飲まれています。

茶葉の利用は古く、中国では、唐代に陸羽により『茶経』が書かれ、この頃にはすでに各地で飲用されていました。日本へは1200年頃に栄西禅師により薬用としてもたらされたとされ、江戸時代には庶民にも飲まれるようになりました。お茶はその加工法により、不発酵茶の緑茶、半発酵茶のウーロン茶、発酵茶の紅茶などがあり、種類も豊富で、世界各地で愛飲されています。

お茶が配合された処方に、『和剤局方』収載の「川芎茶調散」があります。これは、川芎、香附子、白芷、羗活、荊芥、防風、薄荷、甘草などの薬材を細末にし、細茶の湯で服用する珍しい処方です。また、日本の民間療法でもお茶はよく用いられ、水虫や皮膚のただれにお茶の粉末を塗る、のどの痛みにお茶でうがいをするなどの利用法が知られています。

新茶は、寒い季節を乗り越えて萌え出でた新しい芽から作られており、チャの木のたくましい生命力をあわせ持っているように感じます。そのような新茶が今年もまもなく出回ります。