寒天は、みつ豆や水ようかん、心太(ところてん)などを作る時に用いる食材です。もともと中国で製造され、食用に供されていた心太の製法が日本に伝えられ、後に日本で寒天の製造法が考案されたものと言われています。

原材料の海藻にはテングサ属のマクサ、オオブサ、オニクサの3種類が主として用いられます。これらの海藻を水とともによく煮て布で濾し、その水溶液を固めてから、屋外で凍結、解凍、そして天日乾燥を繰り返すことにより寒天を作ります。ゲル状の寒天が完全に凍結すると、寒天質は水分(氷分)と分離します。そして、寒天質の温度がプラスの温度に上昇すると氷分は融解して水になり、寒天質と完全に分離します。このような温度条件が繰り返されることにより、徐々に水分は失われていきます。

現在では長野県の諏訪地域や岐阜県の恵那市で寒天が作られています。諏訪には江戸時代の天保年間に寒天の製法が伝わったとされています。ゲル状の寒天が完全に凍結するのには、最低気温がマイナス5℃以下になる必要があり、これらの地域における気候が寒天作りに適しているのです。

寒天は『日本薬局方』にも収載されており、慢性便秘のときに水に溶かすか、または粉末として服用します。

寒天の原料である海藻は、海の産品であり、それが山国の信州などで特産品になった点は興味深いことです。