お正月には特別な食べ物や行事があります。1月7日の朝に食べる「七草粥」もその一つです。現在一般的に言われる七草は、南北朝時代の四辻善成がよんだ「芹(せり)、薺(なずな)、御形(おぎょう)、繁縷(はこべら)、仏座(ほとけのざ)、菘(すずな)、蘿蔔(すずしろ)、これぞ七種(ななくさ)」の歌に由来するとされています。

七草の中でも筆頭にあげられる芹は、セリ科のセリで、日本全土からアジアにかけて広く分布し、山野の水辺や休耕田などに多く生えています。葉や茎の香りや、歯ざわりがよいことから、古くから野菜として栽培が行われ、『延喜式』にもすでに栽培していることが記されています。

セリは薬用にもされ、『神農本草経』に、「水芹(すいきん)」の名で「婦人の赤沃(血尿)を治し、血を止め、精を養い、血脈を保ち、気を益し、人体を肥健ならしめ、食を嗜(たしな)ましめる」と記載されています。セリは、日ごろの健康の維持増進によいものですが、多食は逆効果となり、また胃腸が弱い人には向かないといわれています。

セリという植物名は、新苗が出る様子が競り合っているようだからついたという説があります。新鮮な野菜の少ない寒い時期に、生命力が強い植物を取り入れようとしたのが、この七草の行事の始まりとも考えられます。