お正月の食卓には、久しぶりに集った家族の前に、お屠蘇、お雑煮、おせち料理などが並び、いつもと違う華やかさがあります。お屠蘇は新年のお祝いに家族全員で飲むお酒です。お屠蘇を飲みながら、新しい年への期待や抱負について身近な人と話し合うのは楽しいものです。

お屠蘇は、平安時代に中国から伝わった習慣で、初めは宮中行事として行われていたのが次第に広まり、江戸時代には庶民の間でもお正月にお屠蘇が飲まれるようになりました。赤い三角の袋に入った「屠蘇散」を大晦日の夜に井戸につるし、その袋を元旦に清酒や味醂に浸してお屠蘇を準備し、年少者から順に飲むのがならわしとされています。なお、現在の中国ではお屠蘇を飲む習慣はすたれてしまったようです。

「屠蘇散」の処方は華陀が考案したという説が有力です。「屠蘇散」の処方にはいろいろありますが、『本草綱目』に掲載されている処方は、朮、桂心、防風、バッカツ、蜀椒、桔梗、大黄、烏頭、赤小豆からなります。現在の日本では、白朮、桂皮、防風、山椒、桔梗の5種を基本として、さらに陳皮、丁子や大茴香などの香りが強い生薬を配合した「屠蘇散」がみられます。

「屠蘇」という名は「蘇という名の鬼を屠る」ことに由来するとされます。また香りが強いものは邪気を祓う効果があると信じられてきました。お屠蘇は家族全員が一年を健康に過ごせるようにという願いがこめられている薬酒なのです。