朝晩冷えこむようになり、秋の深まりを感じます。街でみかけるイチョウは、葉の色が青々とした緑から黄緑そして黄へと変わり始めています。もうしばらくすると葉はすっかり黄色へと変わり、美しいイチョウ並木を楽しむことができます。

この時期、雌株のイチョウの下には、オレンジ色の実がたくさん落ちています。このオレンジ色の部分は柔らかく、強い臭みがあり、触るとかぶれることがあります。この部分を取り除くと白い硬い殻があり、さらに内側には褐色の渋皮があります。その渋皮を取り除いたものをギンナンとして食べます。イチョウの実は、植物形態学的には種子にあたります。オレンジ色の部分、白い殻そして褐色の渋皮はすべて種皮で、種子の中心部分をギンナンとして食べているのです。

ギンナンを焼くか、または煮て食べると、痰の切れをよくし、咳が楽になり、また、頻尿や夜尿症にも効き目があると言われています。ただし、食べ過ぎると、ひきつけを起こしたり、鼻血が出ることもあるので、注意が必要です。

イチョウの葉について、李時珍は「鴨掌の形のようだ」と記しています。また『本朝食鑑』には、イチョウの葉は「書蟲(しみ)をよく除くといわれ、新しい葉を採ってつねに書中にはさむ」とあります。形の珍しさか、はたまた防虫効果を期待してか、時々、古い本にイチョウの葉が挟まれているのをみかけることがあります。イチョウは「読書の秋」とも関係が深いようです。