「八重寒紅梅がほころんだ。」と聞き、1週間ほどが過ぎました。梅は、寒さが厳しい季節にどの花よりも先に開花することから、「梅は百花の魁」の言葉が知られており、春を待ちわびる人々の気持ちを一身にあつめる春の象徴のひとつです。

梅の実が利用されたその歴史は古く、六朝末、後魏の農書『斉民要術』に「烏梅、白梅、蜜梅」の製法が収載されています。「烏梅」は、薫製にした黒い梅実であり、「白梅」は梅干し、「蜜梅」は蜜漬けの梅。薬用とされる「烏梅」は、鎮痛・解毒、健胃整腸作用を有し、風邪薬や胃腸薬とされます。

「梅は三毒を断ち、その日の難を逃れる。」といわれ、また戦国の時代、長い行軍のための息切れ時、生水を飲んだときの殺菌用として、梅干の果肉と米の粉、氷砂糖の粉末を練った「梅干丸(うめぼしがん)」を携えたという話が伝えられています。

梅肉エキスは民間的に「家庭の万能薬」とされます。梅干は日の丸弁当に欠かせず、旅館での朝食時には必ず登場するなど、今では最も身近な食物です。

先日、梅につづき黄色の蝋梅やマンサクの花が咲き始めたと聞きました。毎日毎日、異なる小さい春が順にやってきている今日このごろです。