ウスバサイシン ウマノスズクサ科
 
 ウスバサイシンは、薬草というよりもチョウの食草になることで子供のころか
ら知っていた。博物館の学芸員にギフチョウがこの草を食べて成長することを
教えてもらってからは、休日になると
ウスバサイシン
ウスバサイシン
 
   
ウスバサイシンやカンアオイを探しに山へ出かけていたからである。そして
葉を一枚一枚丁寧に裏返してみて、真珠色の小さな卵が産み付けられていない
か点検して回っていた。ギフチョウは当時でもそれほどたくさんいるチョウで
はなかったから、数えきれないほども葉裏を見て回ったことを思い出す。
 それから何十年にもなるが、未だにウスバサイシンやカンアオイがあれば目
に飛び込んでくる。
 
ウスバサイシンの花
ウスバサイシンの花の拡大
 
ウスバサイシンの花ウスバサイシンの花の拡大 
 
 ウスバサイシンは今頃になると、葉が展開する前の新芽の間から、暗紫色の
壺状の花を1個つける。花に花弁がないが、拡大して見ると壺の入り口が広が
っているからガクが花弁のようにも見える。花は直径2センチぐらい、筒の外
にはタテ側溝が入る。真上から花を見ると三角状になっていて、筒の中を覗く
となかなかおもしろい型をしている。
 地上を這うようにして長く伸びる根茎にはたくさんの節があり、その節から
根を地中へ伸ばしている。
 自生地は木漏れ日の射すような山の斜面でよく見かける。そこは大体谷間に
なっている様子からは、空中湿度は適当にある方が良いようだ。
 
 栽培は、庭植えならば落葉樹の下などへ水はけよくして植えるとよい。鉢植
えにするには山野草鉢を用いるとよく似合う。培養土はこの欄でいつも用いて 
いる鹿沼土、赤玉土、日向土の混合したものに腐葉土や堆肥を1割ほど混合し
て用いればよい。
 植えるときに、根は土中に入れるが、根
ウスバサイシンの根茎と節の様子

ウスバサイシンの根茎と節の様子
茎を深く植えないで見える程度にうすく土
をかけておく。
 サイシンの仲間は水切れに弱いから、培
養土が乾くと十分に与えるようにする。
 鉢の置き場所も直射日光を避けて大きな
樹の下や、あるいはよしずや寒冷紗で日覆
いをして日陰になるようなところに置く。
 肥料はたくさん必要ないが、花後に油粕
と骨粉を発酵させた小さな団子を少量与えておくとよく増える。
 増やし方は長く伸びた根茎を、葉が出る前に二節ほどづつに切り取り植える。
 
 ウスバサイシンは、古くから咳止めや痛み止めの薬として利用されてきた。
薬用には根と根茎を掘り取り、水洗いして陰干しにしたものを用いるとある。
 1鉢だけ植えていたのでは薬用に使えるほどにもならないが、サイシンの葉
が食べられるようで、若葉2枚のうちの一枚を採集して、かるく茹でてからド
レッシングをかけて食べると特有の香りが楽しめて美味しいとあった。また、
大きく展開した葉も、裏にうすく衣をつけて天ぷらにして食べられるとあった
から、残しておいたところで冬になると葉を落とすのだから、この方は葉のあ
るうちにぜひ試してみたいと考えている。
 

(2013年4月1日)