ジギタリス ゴマノハグサ科
 
 
ジギタリスの花

  ジギタリスの花
 ジギタリスは古くから薬用として民間で用いられて
いましたが、1600年代になってイギリスの医家に
よってその薬効が認められて薬局方にも収載される
ようになった薬草です。日本へは明治12年ごろに
渡来したようです。
 その頃の本にはキツネノテブクロの名で出て
いることもありますが、これはジキタリスの英名
がフォックスグローブとついているのを直訳した
のです。この植物の花が筒状で手袋の指に似て
いるから付けられたようですが、でも、どうして
森野旧薬園(奈良)にて

  森野旧薬園(奈良)にて
キツネが出てくるのでしょう。
 
 花は、5〜7月頃になると1m以上にも花穂を
伸ばしてその長く伸びた花穂に釣鐘状の花が
びっしり並んで付きます。たくさん咲くとそれは
それは見事な光景です。
 花がきれいなことから薬草としてよりも観賞用
として改良されて、花の色が赤色の他に白色、
桃色、紫色、鹿の子絞りなど様々な品種があります。
 
 

 栽培方法は、薬草の栽培書や古い薬
市販のジキタリス苗

  市販のジキタリス苗
局方にも詳しく書かれています。
 それらを要約しますと、種まきは秋
のころ、そして春になって花壇や畑に
移植をしますとあります。それではも
う手遅れではないか。秋まで待たなく
てはならないのか。でも心配いりませ
ん。今頃、写真のような苗が園芸店や
量販店で売っていました。
 
 
 この苗を利用しますと花の時期まで数か月分は、栽培の手間が省けたことに
なります。
 
 さらにジギタリスは、性質がきわめて強いので日本の気候であればいずれの
地でも栽培ができて、土質も特に選ぶ必要はない、とありますから、普通に花
が栽培できる土地であればよいということです。とはいえ、畑地は十分に日の
当たるところを選び、植える前によく耕して堆肥を入れたり、元肥を施してお
くことは必要です。秋になれば追肥をして、薬用には翌年の初夏に収穫です。
それ以前に収穫した葉は効力弱くて薬用に堪えない、と書いてありました。
 
 播種してから3年目の6月中旬に花が三分の二開花したときに葉を収穫して、
先ず陰干しし、さらに半日間は日光に当てて乾燥します。
 加工調製方法も詳しく書いてあります。根元より刈取り、夕方になって左手
に端を持って右手の指で葉を下方に扱くようにして採集する。葉を十分に乾燥
して1枚ごとに広げて30匁ぐらいずつを積み重ねて、撚糸にて中央部を括り、
さらに半日、陽乾してできあがります。というように実に詳しく書いてあって、
当時はきっとこうして薬草を作っていたのでしょう。
 
 でも鑑賞用に栽培するのは簡単です。暖かくなるころには園芸店に苗が出回
りますから植えるにはこれからでも間に合います。種から育てますと花が咲く
までには2年〜3年かかりますから市販苗を利用する方が簡単です。
 花壇へ植える場所は水はけよく、日の当たる場所を選んで植えますが半日陰
地でも育ちます。苗を植えるところが決まれば先に堆肥などを入れてよく耕し
てから植えます。そして春と秋には肥料を与えます。その間も時々液肥を与え
るのもよいでしょう。
 はじめはロゼット状で小さくても、成長して花が咲くようになると長い花穂
を伸ばしてとひときわ目立ちます。園芸品種のジギタリスは、花の期間も長く、
花の色も豊富にあって花壇にぴったりの花です。
 葉がコンフリーにも似ていますから、間違って食べて死亡した例もあるよう
なので注意が必要です。葉に鋸歯があって、舐めると苦みがあることから見分
けられます。
 

(2013年2月1日)