ミョウガ ショウガ科
 
 むかしからミョウガを食べると物忘れをするという俗言がある。落語で、旅館の主人が
客にせっせとミョウガを食べさせて、預かった荷物を忘れさせようとしたのだが、客は宿
賃を払うのを忘れて行ってしまったというはなしがある。会食で料理にミョウガが添えら
れていると、そんな話題がいっぱい出てくるから食事が一層楽しくなる。実にミョウガは
不思議な食材だ。
 
 素麺や冷奴が好きで、夏になるとよく食べる。その時ミョウガの蕾を細かく切って、ち
ょっと添えると彩もきれいに見えて一層おいしく感じる。それにあの独特の香味が良い。
 それで家の空地にミョウガを数株植えてある。夏頃になると、まだかまだかと花芽の出る
のを見に回るのがまた楽しみになっている。
ミョウガの花
  ミョウガの花
 
 ミョウガは宿根草で、しかも丈夫な植物なので一度植
えるとほとんど手入れの必要はない。根茎は枝分かれし
てよく増える。初め数株植えただけでも、今では広い面
積を占めるまでに株が広がっている。
 鉢植えでもできるので身近なところで作っておくと
いつでも花や葉を利用できて重宝することがある。
 
 
 そんなミョウガの苗は今頃、園芸店やホームセンターでたくさん売られている。根茎はお
がくずのようなものと一緒にビニール袋に入っているから、できるだけ新芽のたくさん付
いた元気な株を選ぶとよい。
ミョウガの根
  ミョウガの根
 袋から取り出すと葉の付いていた痕から幾本も根が
伸びているから、植える前に重なり合ったところを整
理しておく。
 
ミョウガは半日陰を好むので、庭に植えるときは大
きな木の下などに植えるとよい。植える前に基肥とし
て堆肥や化成肥料をすき込んでおく。そして毎年、新
芽が伸びだしたころに化成肥料などを少し追肥する。
 植えてから4,5年もすれば茎数は増えて密植状態になるから、混み合ったところを間引
くか、あるいは植え替える。
 
 鉢へ植えるときは比較的大きな鉢を用いる。ミョウガの根はよく枝分かれして、伸びる
のも早いので小さい鉢ではすぐいっぱいになってしまう。最近は大根やジャガイモでも作
れますと書いた、大きなプラ鉢がホームセンターや園芸店でたくさん売られているから、
それを利用するのが良い。今回は直径が35センチの大きなプラ鉢へ植えてみた。
 
 まず鉢底にネットを敷き、鉢穴から虫などが入らないようにする。そして大粒の鉢底石
を入れてから培養土を鉢の半分程度まで入れる。その上に株を置き、新芽の伸びる方向が
重ならないように配置する。さらに培養土を加えて鉢植えの出来上がり。
 新芽が伸び出したころに少量の肥料を与える。鉢の置き場所は半日影が良いから、家の
北側や木の下を利用する。水やりは毎日やる必要はないが、土の表面が乾けば十分に与える
る。
 
鉢植えは根茎を広げて配置し、 上から培養土をかけると出来上がり
    鉢植えは根茎を広げて配置し、上から培養土をかけると出来上がり
 わが家の庭のミョウガは全くの放任栽培であるが、毎年、花を楽しませてくれる。食べ
るときは花の咲く前の蕾を収穫する。蕾を細く切って薬味にしたり、吸い物に入れる。ま
た、揚げ物にしても美味しいし、漬物にも利用できる。
 
 和漢薬図鑑に、花穂は生食して消化促進に、腎臓病に根茎を煎じて服用、しもやけには
根茎の煎汁で洗うとよいとあった。
 

(2011年3月1日)