アサツキ ユリ科
 
 アサツキは日本各地の山野、中でも海岸沿いに多く見
シロウマアサツキ
  シロウマアサツキ
られるユリ科の多年草である。中にはシロウマアサツキ
のように白馬岳の高山に分布している種類もある。
 春になると筒状の細い葉をたくさん伸ばすことから、
糸葱ともいわれる。
 古くから食用に利用されてきた記録があり、貝原益軒
の菜譜には小葱と記載されている。
 
 球根を植えると、ひと月ほどでたくさんの葉を伸ばし
だす。葉が20cmほどに伸びれば収穫できる。
アサツキの種球
  アサツキの種球
 今頃植えた株は冬に一旦葉が枯れるが、春に
なると再び葉を伸ばす。
 春の終わり頃にはうす紫色の花を咲かせて、
夏は休眠する。したがって葉が枯れたら球根を
掘り上げて2,3日陰干しにしてから、それを網
袋に入れて日陰につるして保存している。そし
て今頃になって再び畑に植える。すると毎年、
種球を買わなくとも栽培できるので大変重宝し
ている。
 
 わが家のアサツキは、旅の途中で立ち寄った道の駅でアサツキの球根を売っ
ていたのを買ったものだ。それから数年経つが、その種球を今も植え継いで栽
培しているものである。そのため毎年全部を食べないで次の年の種球用として
必要な株だけ残して置くことにしている。それでも球根は何倍にも増えるので
食用として十分賄えている。
 
 アサツキは栽培が容易であるから家庭菜園に最適な野菜である。砂壌土を好
むから畑は水はけの良いところで、前もって苦土石灰や堆肥を入れてよく耕し
ておく。
 植えるときは球根の先が地表にわずかに見えるぐらいの深さが良い。球根を
手に持って、根の方を下にして土に差し込むと簡単に植えられる。株間10?ほ
どで2球ずつ植える。
 
 プランターで栽培するときは、野菜栽培用として売っている少し大きなもの
を用いる。大粒の鉢底石を入れて、その上に園芸培養土を2?ほどのウオータ
ータースペースを残して入れる。そこへ先がわずかに見える程度に球根を差し込ん
でいく。株間10?ほどで、2球ずつ植えるのがよい。
 食用には若い葉を鱗茎ともに掘り取って、さっと茹でて酢味噌和えにして食
べる。また、葉を麺類やみそ汁の薬味に用いる。少量使うときには地上部の葉
だけを切り取って使ってもよい。球根からは再び葉を伸ばすから2〜3度収穫
できる。
 
 森友政勝著「山菜と糧物」には、酢漬けにしたものを砂糖やトウガラシなど
で味付けをして食べるとあり、それはラッキョウのように臭気がなく、色は純
白で歯切れよく、味は淡白で癖もなく、老若男女に悦ばれると書いてあった。
 
アサツキと似た植物にワケギがある。ワケギは
ワケギ(左)とアサツキ(右)

  ワケギ(左)とアサツキ(右)
ネギとシャロットの雑種であるそうだが、アサツ
キと同じように栽培できるし食べられる。
 違いは鱗茎の色がアサツキは灰白色からうす
紫色であるのに対して、ワケギは薄茶色をしてい
るから区別できる。
 アサツキやワケギの種球は、植え時のこの時期
になると園芸店やホームセンターで容易に手に入
れることができる。

(2010年9月1日)