日本薬局方(日局、第18改正)に「ビャクジュツ(白朮):ATRACTYLODIS RHIZOMA」と収載され、本品は1)オケラAtractylodes japonica Koidzumi ex Kitamuraの根茎(和ビャクジュツ)又は2)オオバナオケラ A. macrocephala Koidzumi (A. ovata De Candolle) (キク科Asteraceae:Compositae)の根茎(唐ビャクジュツ)であると記載されて、漢方では利水薬として用いられる生薬です。性状は、1) 和ビャクジュツ:本品の周皮を除いたものは不整塊状又は不規則に屈曲した円柱状を呈し、外面は淡灰黄色~淡黄白色で、質はやや疎で繊維質であるが、油室(油点)が多く特異な香気があり、味は僅かに苦いものが良品とされます。2) 唐ビャクジュツ:本品は不整に肥大した大きな塊状を呈し、外面は灰黄色~暗褐色を呈し、断面は淡褐色~暗褐色で、質は硬固で空洞がなく、油点があり特異な香気があり、味は僅かに甘く、後に僅かに苦いものが良品とされます。両生薬ともに柔組織中にはイヌリンの結晶及びシュウ酸カルシウムの小針晶を含みます。
オケラは本州〜九州、朝鮮半島、中国東北部の草原の日当たりのよい乾いた場所に分布する雌雄異株の多年草で、春の若芽を山菜として食用にし、花期は9~10月頃です。万葉集では「うけら(宇家良)」と呼ばれていました。近縁種のオオバナオケラは中国原産で、我が国でも栽培されています。
一方、同日局には「ソウジュツ(蒼朮):ATRACTYLODIS LANCEAE RHIZOMA」も収載され、本品はホソバオケラAtractylodes lancea De Candolle、シナオケラA. chinensis Koidzumi又はそれらの種間雑種の根茎であると記載されて、同じく利水薬として用いられる生薬です。性状は不規則に屈曲した円柱形を呈し、外面は暗灰褐色~暗黄褐色で、横切面はほぼ円形で淡褐色~赤褐色の分泌物による細点を認め、芳香が強く味は甘辛く僅かに苦みがあり白色綿状の結晶を析出するものが良品とされます。ホソバオケラは江戸時代の享保年間に種苗が導入され、新潟県佐渡島で栽培されたことから「サドオケラ」の名がありますが、現在流通している生薬「蒼朮」は全て中国産です。
現在、中国では両生薬は脾胃を補い気を巡らす作用は共通ですが、白朮は利水しながら湿邪を除く作用、蒼朮は発汗しながら湿邪を除く作用を目的に用いています。我が国の漢方処方においては、白朮・蒼朮の使い方は若干原典の記載と一致しないものがありますが、日局では純度試験によりアトラクチロンを主成分としてアトラクチロジンを含まないものを白朮、アトラクチロジンを多く含みアトラクチロンをあまり含まないものを蒼朮として、両生薬は区別して使用されるようになってきています。そこで、基原植物も成分化学的にも異なる生薬を同列に用いるには無理があるとの考えから、本稿では原典に朮あるいは白朮と記載されている生薬の性状や成分、配合されている処方について述べることにします。
白朮は神農本草経の上品に「朮」として収載され、別名では「山薊(さんけい)」といわれます。性味は苦甘・温、帰経は脾・胃で、脾胃を補い、湿を除き、健胃・利尿・止瀉の効能があるので、消化器系の弱い虚弱体質、食欲不振、疲労倦怠感、腹部膨満感、下痢、胃内停水、水腫、関節炎、神経痛、小便困難、めまい、寝汗、妊婦のむくみなどに用いられます。
成分としては精油のユーデスマジエン、アトラクチロン、アトラクチレノリドなどを含み、これらに抗炎症・胆汁分泌促進・抗潰瘍・肝障害抑制が認められています。特に、アトラクチロンは嗅覚を刺激して胃液の分泌を促進します。
白朮は麻黄や桂皮などの発汗剤と配合すると、体表および筋肉の湿邪を利水によって除去する作用が強まるので、神経痛・リウマチなどの疾患に多く用いられます。また人参、茯苓などの健胃健脾剤と配合すると、食欲不振・胃重感など胃腸系の疾患に力を発揮します。さらに当帰・川芎などの温血剤と配合すると安胎作用が増強され、猪苓、沢瀉などの利水剤と配合すると利尿作用が増強されてむくみを治します。
配合応用としては、白朮+桂皮・附子は身体を温め、気血の流通を促し、体表の湿を除く作用を増強し、神経痛・リウマチ・関節痛を治す「桂枝加朮附湯」、白朮+人参は胃腸の機能衰弱による食欲不振、倦怠無力、消化不良、腹部膨満感、慢性下痢、めまい、貧血、自汗を治す「人参湯、参苓白朮散」、白朮+黄耆・大棗は虚弱体質や胃下垂などの内臓下垂、倦怠感などを治す「補中益気湯」、白朮+五味子・黄柏は暑気あたり、暑さによる食欲不振・下痢・倦怠感を治す「清暑益気湯」、白朮+当帰は腹部を温め、血流を促し、貧血・流産しかかったもの・むくみを治す「当帰散」、白朮+乾姜は陽気を巡らし、腰の冷えと痛み、水腫を除く「苓姜朮甘湯」、白朮+猪苓は体内の水分代謝を促し、口渇を止め、利水を促進し、むくみを去る「五苓散」、白朮+茯苓・桂皮は気を巡らし、水の偏在で起こる頭痛、めまい・ふらつきを治す「苓桂朮甘湯」など、健脾・補気・利水・止瀉を目標にした多くの漢方処方に配合されています。
